もともと美容院に行くのが苦手で台灣で美容院に行くのはほぼ修行なので、初めてセルフカットにチャレンジしてみたんです。
そしたらまあ思ったよりずっといい感じに仕上がってびっくり!
よかったんだけど、これでまた一段と社会との乖離が進んだような気がします。




さて、11月某日、90代で大往生した夫のおばあさんの葬儀が宜蘭は礁溪で執り行われました。

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礁溪は温泉で有名な場所なので、山道を葬儀場へと上っていく途中にはこのようなリゾートホテルの姿も 。



おばあさんの訃報が入ったその日、「ついにこの日が来てしまったか」という思いに打ちひしがれた私。
長い間寝たきりだったので、ついに旅立たれてしまったかと悲しく思った気持ちももちろんあるが、不謹慎ながら「台湾のお葬式に行くのが怖すぎる」という気持ちも同時にありましてね・・・

だって異国の葬式ですよ・・・怖くないですか?
これまで会ったことも名前も聞いたこともない台湾人親戚が大集合する中に自分一人だけ外国人ですよ・・・考えただけでちびるでしょう?
不安で葬儀の1週間前くらいからは特に緊張して食欲もあまりわきませんでした。
少しも痩せなかったけど。



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(大自然に囲まれた広大な葬儀場)

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(遺族は黒い袈裟のようなものを着用して、腕にこんなリボンをつける。
夫に聞いたがどんな意味があるのかは知らんという)


当日ももちろん不安で憂鬱で、かなり気を奮い立たせねばならない状態ではありましたが、まあでも夫から片時も離れず作法も夫をそっくりマネしてれば大丈夫と自分に言い聞かせて式の開始を待っていた。

しかし色々と想定外は起こるものでしてね。



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朝9時半、まず遺族による追悼儀式のようなものからスタート。

まあ台湾も仏教の国だし、基本的には日本と同じでじっと座って読経を聞いていればいいのかなと思うじゃないですか。
ところがどっこい・・・基本的に祭壇の前で床(土足)にひざまずいて断続的に土下座するという超異文化の初見殺しスタイル
男女別に待機場所が分かれてるから夫に指示を仰ぐことも叶わないわ、司会者の指示に従おうにもオール台湾語だからわからないわ、隣の人の動きをマネしようにも床(土足)に頭をつけてひざまずくから周囲の様子がわからないわ・・・
ひざまずいては立ち上がり、お辞儀をしてはひざまずき、脇の下から隣の従姉妹の動きをガン見しながら必死で周りに合わせましたよ。

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土下座と起立の繰り返しをを30分ほど続け、その後弔問客の焼香(というかお祈り)へ移行。
100人は優に超えるのではという人々が代わる代わるやってきていて、中には宜蘭県の議員の姿も。
生前何か関係があったのかと夫に尋ねたところ、「ないけど選挙活動の一環で住民の葬儀を回ってる」のだという・・・
式の要所要所に見る文化の違い。


初見殺し過ぎる儀式での疲労に加え、会場の環境そのものも日本と比べるとなかなか過酷。
会場は扉のない半オープンエアーな造りで、この日は11月にも関わらず夏のような蒸し暑さだったため常に汗ばむ感じ。
火葬所や待合所もすべて吹きさらしの屋外で、あっちこっち移動しているうちに熱中症っぽくなってしまった上に、金紙(死者を送るために燃やすお金に模した紙)を燃やす炉の周りが地獄のように灼熱で・・・下手すると誰か倒れるんじゃないかと本当に心配になるほどでしたが、幸い私も含めて最後まで脱落者はおりませんでした。
ひょっとすると台湾の葬儀というのは、死の苦しみを共有するためにわざと遺族を痛めつけるような内容になっているのでは・・・と思えてくるくらい個人的には非常に体力を消耗する葬儀だった。

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(敷地内には簡単なコンビニがあり、お昼はここで束の間の水分・カロリー補給)


その他に目についた日本の葬儀との違いや気になったところとしては
●告別式中は隣同士お喋りしてる人がけっこういる
●モニターに手作りの追悼ムービーが流れる
●出棺時に故人が好きだった音楽を流す(童謡の夕焼けこやけを流していた)
●司会者の合図の出し方がハンドサイン付きで応援団長っぽい

●司会者が泣く
●骨上げする部屋が雑(骨壷の台座の後ろの壁画が思いっきり曲がっていたり台座の上にいらんものが散らかってたりで何だか・・・)
●葬儀場敷地内に野犬がいる

などなど。
色々ありすぎてすべてを書き上げることはできませんが、異文化を感じるポイントはかなり多くて久しぶりにカルチャーショックを受けた気分でした。


まあ初めて参加する異国の葬儀でスマートに振る舞える奴なんていないとは思いますが、グダグダもちゃもちゃしながらなんとか切り抜けたというような情けない具合でした。
幸い、総勢20名ほどの親戚達とも会話するタイミングはそれほどなく(話しかけんじゃねえオーラを出して隅の方でじっとしていたからだと思うが)、唯一叔父さんに「あんたのひざまずき方はきれいだった」という微妙なコメントをもらいました。
ジャパニーズ土下座のDNAがこんなところで役に立つとは・・・


式の後はお寺に移動してさらに読経したりひざまずいたりして、最後は会場の人の先導で市内のレストランに移動し、軽く会食をして一気に解散。
台湾人のいいところは会食の終わり方が雑なところですね。

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ちなみに会食中も中国語がまったくわからないふりをして何とか会話に参加せずに済んだのですが、ある時いとこ同士で鬼滅の刃の話題になって、一人の従姉妹が「映画見たけどちょっと熱すぎて中二みたいじゃねww」と話しているのが耳に入ってきて危うく「表に出ろ」と突っかかっていくところでした。
煉獄さんをディスる奴は許さない。


と、てんやわんやの一日が終わり家に着いたのは夜9時。本当に丸一日の仕事でした。
異国での初めての葬儀の体験だったし、夫の親戚一同と顔を合わせることなんてそれこそ初めてだったのでもう今年一番と言っていいくらいどっと疲れ、帰宅したときには心底ホッとしました。

しかし緊張の糸が切れると、押さえつけていたストレスの影響か今度はなんか頭の中がモヤモヤしてきた。
100人を超える弔問客とたくさんの遺族に囲まれて送られたおばあさんは、なんと立派で幸せな人なのだろうと思ったこの日。
その一方、私が死ぬ時って誰かが見送ってくれる可能性どれくらいあるのかなあとか妙に深く考えてしまって、その後数日間ひどい鬱でした。
もちろん義父達子供5人を立派に育て上げたおばあさんだからこそ最後も皆に看取られあのような盛大な葬儀が行われたというものであって、子孫を残さない以上は孤独死上等のつもりで生きなければならないのは最初からわかっているのだが、なんだか人生というのは虚しいものだなと思ってしまって。

まず猫達が逝ってしまう。
そして何十年後か知らないが、私より年上で不健康クソデブの夫は確実に私より先に逝くだろう。
一人になった私はどのように死を待ち、どう逝くのだろう・・・
そんなふうに考え始めると何もかも嫌になり、ここなら首が吊れるだろうかなどと浴室のガラス戸の枠を見つめて考え込んでしまった。
猫と夫を悲しませてはいけないと思い改めその後はまったく復調しましたが、何かこう人の死を目の当たりにすると自分の死についても考えてしまうものですね。
あるいはわりと真剣に、葬儀場の何かに憑かれたか・・・








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