予想通りグダグダした、年末の台灣でのゴリ男と私の再会。
それからあっという間に数ヶ月が経ち、今度はゴリ男が日本へ遊びに来ることになった。

ゴリ男にとっては初めての訪日。
そして私にとっては初の外国人アテンドである。
互いに期待と不安が入り交じる心境の中、桜舞い散る春の日にゴリ男は神戸にやってきた。

この度のゴリ男訪日に関して、私が期待を寄せていたのはゴリ男が持ってくるであろう台灣土産だった。
普通、パイナップルケーキを持ってくるはずだと思っていた。
当時私はパイナップルケーキが大好物で、台灣を訪れる度に大量購入して帰国後冷凍庫に保存、解凍しながらちまちま食べるくらいのパイナップルケーキ狂いだった。
そんな私のもとに、もうすぐフレッシュな本場のパイナップルケーキがゴリ男によって届けられようとしている。
この状況に喜ばずにはいられず、私は胸を高鳴らせた。

しかしあろうことか来日したゴリ男は、何の土産も持たずに身一つでやってきた。
手に土産らしき紙袋を持っているわけでもなければ、スーツケースから紙袋を取り出す様子もなく、へらへらと笑いながら日本はまだまだ寒いねーなどとどうでもいいことをゴリ男はつぶやいていた。

私は非常に悲しくなり、そして憤慨した。
本来であればホスピタリティー溢れる対応でにこやかにゴリ男を出迎えてあげようと考えていたが、手土産無しのショックは思った以上に激しく私の心を打ちのめし、テンションがめちゃくちゃに下がってしまった。

外国にいる恋人のもとを訪れるのに、何の手土産も持たずに来るというのは、人としてどうなのだ?
これもまた、文化の違いという一言で片付けられる問題なのだろうか?

しばし考え、いや、これは文化の問題ではないな、と思った。
きっと、思いやりの有無の問題だと思った。
相手を思いやる気持ちがある人間であれば、こういうシチュエーションでは普通お土産を渡そうという考えに至るはずだ。
例えば彼がフランス人であればマカロンを、マサイ族であれば伝統衣装なり首飾りなりを持って来るだろうきっと。
全世界でアンケートを取ったら、手土産持っていく派が大多数を占めると私は思っていた。

実はこのゴリ男には、思いやりということに関して前科があった。
年末に台灣に行った時、私はクリスマスプレゼントとして奮発して吉田カバンのボディバッグをゴリ男に贈ったのだが、なんとそのお返しが何もなかったのである。
旅行最終日まで気長に待ったが、ゴリ男は私に飴一つくれなかった。
あの吉田カバンがいくらしたと思っているんだろう、ということを言いたいわけではないが、普通何でもいいから何かお返しをするだろう?と私は驚いて、気を落としたものだった。

せめてその時のことを今回お土産で挽回してもらえたら嬉しい、という気持ちが少しあったので、ゴリ男が手ぶらで来たことに本当に落胆してしまったのだ。
そして、この男、やはり常識や良識が欠如してるんではないかという疑念が、私の心の中で急激に渦を巻いた。

そんな第一印象が最悪な再会だったので、私は3日間のアテンドに気が入らなくなり、神戸の観光名所をただ事務的に、無表情でゴリラを引き連れて歩き回ることになった。

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最初の印象が悪かっただけでなく、やはり中国語でのコミュニケーションがうまく行かないのはこの時も相変わらずで、喋れば喋るほど苛立ち、私の心は3日間でどん底まで疲弊していった。

そしてゴリ男帰国の日、私達の間には重い空気が漂っていた。
この3日間何ら楽しいと思える会話があったわけでもなく、二人の雰囲気は最悪。
初めての日本旅行がこんな葬式的なムードで幕を閉じようとしていることをゴリ男はどう思っているのだろうかと、私はため息をついた。

しかし当のゴリ男は、空港のスタバでコーヒーを飲みながらへらへらしているだけで、そのことについて言及する様子もまったく見せない。

一体何を考えているんだこのゴリラは!!

私の苛立ちは頂点に達し、「ズットオモッテイタンダケド、ヤセタホウガインジャナイ?」と拙い中国語で、嫌味たらしくゴリ男の容姿について指摘することで怒りをぶつけた。

ゴリ男は一瞬面食らった様子で、「ああ・・・うん」とだけ言った。

それが、二人が日本で交わした最後の会話だった。


一体、この3日間は何だったんだろう。
本当ならうれしいはずの恋人との再会が、パイナップルケーキ不持参を発端にこんなことに。
私は落胆と怒りと疲労で、もはやこの先ゴリ男との関係を継続することは不可能だと思った。
これまでも幾度となくそのように思ったことがあったが、今回の出来事は決定打となりそうな感じがしていた。

そして一方で何を考えているのかさっぱりわからないゴリ男だったが、そんなヤツでも私の気持ちの変化は感じ取っていたようである。
帰国後のゴリ男からは、「もう別れようか?」という内容のメールが送信されてきた。
 
ついに、いよいよ、今度こそ決別の時が来たか・・・!

次回へ続く。